帰ってきたよ【(再)ガソリンスタンド編】

アルバイト

まさかのリストラ、前編OL編はこちら

~社会人編④~ 

自分の意思とは無関係に無職になったのは、このときが初めてだった。 

退職時、女性支店長がプレゼントしてくれたイヴ・サンローランの口紅は、正直あまり似合わなかったけれど、もったいなくてなかなか捨てられなかったのを覚えてる。笑 

自己紹介にも書いているけれど、とにかく私は貯金ができないタイプ。 

「仕事しなくて毎日自由〜♪」なんて悠々自適にはならず、ぼんやりと“次はどんな仕事をしようかな〜”と考える毎日だった。 

とはいえ実家暮らし。食べることも寝ることも困らない。 

(ちなみに、自慢じゃないけれど実家にお金を入れたことは一度もない。ドヤ。) 

でも、ゴロゴロしていたら妹に「ゴロゴロしてるなら働け」と言われたことは、今でもちょっと根に持ってる。笑 

いろいろ調べていて気になったのは、パチンコ屋さん。 

パチンコをしたことはなかったけれど、制服が可愛くて候補に上がった。 

「目押しできなくても働けるのかなぁ」 

「タバコ臭いのはイヤだなぁ」 

「箱、重くて腰やられちゃうかなぁ…」 

「バイトしてた友達は楽しそうだったなぁ」 

そんなことを考える日々。 

契約社員であっさり仕事を失ったばかりだったから、「正社員がいい」というこだわりはなかった。 

それでもなかなかパチンコ屋さんに電話をしなかったのは、私の直感が“違う”と言っていたんだろう。 

そんなとき、一本の電話がかかってきた。 

元バイト先のガソリンスタンドからの着信。 

出てみると「はじめまして、○○です」と知らない声。 

話を聞くと、今は別の店舗の店長で、今度私がいた店舗に異動になるらしい。 

そして「最強のメンバーでスタートしたくて、既存メンバーに聞いたらあなたの名前が挙がった」と。

…なんてラッキー! 

仕事を探していたタイミングでのお誘い。 

そして私を“最強のメンバー”のひとりとして思い出してくれた元スタッフたち。…好き!! 

一応、形だけ面接をして、合格。 

その店長は、やる気も発想力も、接客のスタンスもすごかった。 

「自分が信じたことは本当にそうなる」って思っているような人で、その考え方が私はすごく好きだった。 

逆に、合わない人にはまったく合わないタイプだったと思う。 

でも、「あれやれ!これやれ!」って指示するだけじゃなくて、自分からどんどん動く。 

というか、動きたくなっちゃう人。笑 

前回とはまた違う空気感で、それが逆に新鮮で、毎日がやりがいに満ちていた。 

だけどもちろん、いろいろあった。

私が辞めたあとに現場を仕切っていた後輩は、私の復帰を露骨にイヤがった。 

私が辞めたあとに入ってきた子たちは、「この人なんでお店のことこんなに知ってるの?」って不思議そうな顔をしていた。 

もちろん最初は謙虚に過ごしていた。笑 

でも、常連さんたちが嬉しそうに声をかけてくれるうちに、いつの間にか元のテンポに戻って、バリバリ働くようになっていた。 

気づけば、後輩とのわだかまりもいつの間にかなくなっていた。 

戻ってからは4年働いた。 

前回は「自由!楽しい!」がベースだったけれど、再スタートのときは、緊張感もあったし、後輩との関係性や、増えていくスタッフのやんちゃっぷりにモヤモヤした日もあった。 

・いつの間にか付き合っていた高校生カップルは、けんか別れしたあと彼女が来なくなった。(遠い目) 

・クラブで朝まで遊んでいた後輩は、シフトの時間になっても連絡がつかず、6時間後に堂々と遅刻してきた。(遠い目) 

・商品の在庫が合わないと騒いでいたら、パチンコ通いに精を出していたパートさんが、リサイクルショップに売っていた(遠い目) 

・子どもの発熱でしょっちゅう休んでいたパートさんが、実はパチンコ屋にいくためにウソをついて休んでいた(そう、前述のパートさん) 

・奥さんが里帰り出産している間にバイトと不倫、のちに奥さんと別れて堂々と交際していた社員。 

・彼氏と同棲していた後輩。ある日、その彼氏が逮捕され、警察が聞き取りにやってきた。 

・奥さんが自分に内緒でキャバクラで働いていたショックから、新入社員の女の子と不倫をしていた社員。(←バイトの一人が「二人が同じ柔軟剤のにおいがする!」と言い出したことから判明。すごい)のちに新入社員と結婚、新入社員退職。その後、その新入社員のお母さん(義母)と不倫。(え、ドラマ) 

だけど、やっぱりやりがいがあった。

「とってみない?」と提案されて、研修費用・受験費用すべて出してもらって所得した乙4。

久しぶりにした勉強は、ガチで楽しかった。

1年で一番力が入る12月の忙しさは、みんなで毎日リポD飲んで、楽しみながら乗り切った。

(私はやっぱり、自分一人でどうにかするより、みんなで「やろうぜ!」みたいな雰囲気が好き)

今では考えられないようなことも、当時は普通にあった。 

突然「髪の色は何番まで!」みたいな規定ができたり、制服が可愛くなくなったり、ネイルの色に細かく口を出されたり…。正直、萎えたこともあった。笑 

仕事終わりには、当時流行っていた相席屋や合コンに行って、出会いにも全力投球。 

…でも彼氏はできなかった。 

そして29歳の誕生日を前に、ふと思った。 

「私はこのまま一生独身かもしれない。貯金もない。正社員で働こう。」 

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